行政書士がIPO支援というと、えっどういうこと??と思う方もいらっしゃるかもしれません。
※IPO = Initial Public Offeringの略。日本語で言うと新規株式公開。
実は、行政書士の業務とIPOはとても親和性の高いものなのです。
IPO審査における重点チェック項目
IPO審査で重点的にチェックされる項目は、ざっくり言うと下記の2つに大別されます。
1.上場後の利益計画の策定(主に経営企画部門、財務経理部門が担当するもの)
2.コーポレートガバナンス体制の強化(主に法務部門が担当するもの)
このうち、本ブログでは「2.コーポレートガバナンス体制の強化」に的を絞って記載していきたいと思います。
コーポレートガバナンス体制の強化
企業による粉飾決算、顧客の個人情報漏洩、パワーハラスメントや長時間労働による従業員の自殺・過労死等、昨今ニュース騒がせている企業のコンプライアンス違反は後を絶ちません。また、社外取締役の設置義務化等、ガバナンス強化のための会社法改正が可決されるなど、企業のコーポレートガバナンス体制の強化はさらに重要性を増しております。
そんな中、IPOにおける審査項目は社会情勢を色濃く反映することもあり、当コーポレートガバナンス体制の強化は、上述のとおり、上場後の利益計画の策定と並んで、とても重要視されている項目なのです。
コーポレートガバナンス体制の強化といってもその項目は多岐に渡ります。
代表例:
株主総会、取締役会、経営会議、コンプライアンス委員会、リスク管理委員会等の会議体運営、議事録の作成
上場会社として相応しい社内規程の策定
適切な職務権限表の策定(職務権限表は、企業のアクションを項目別に分け、かつ、その重要度に従って決裁の基準を定めるもので、コーポレートガバナンスの「核」となるものです)
労働基準法その他労働関係法規の遵守(ex. 36協定の遵守、労働条件の不利益変更の原則禁止)
内部監査体制の強化
株主総会招集通知の作成
新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部、Ⅱの部)作成
新株予約権(ストック・オプション)の発行、新株予約権原簿の管理 etc.
上述したものは代表的なものですが、その他にも対応すべき項目は多々あり、IPO審査において、とても重要な割合を占めております。
ご覧いただいてお気づきの方も多いかと思いますが、ほとんど法務が関わる書類作成です。法務に関する書類作成こそ、行政書士がもっとも得意とする分野です。
IPO審査においては、上記を代表として大量のペーパーワークが発生します。ひと昔前の、IPOを目指す企業の従業員が、毎晩徹夜を余儀なくされていたのは、上記理由のためでした。
しかしながら昨今の長時間労働問題により労働基準法が改正(厳格化)され、従業員が徹夜することはもちろんのこと、原則、月45時間を超えて残業することはできません(別途36協定を締結し、延長することは可能ですが、様々な上限規定があります)。
なぜ行政書士が必要なのか
そんな状況下、IPOを目指す企業は、コンサルティング会社等の外注業者に業務委託するケースがほとんどだと思います。
経理・財務等の数字系のIPOコンサルティング会社は数えきれないほどあるものの、法務・コンプライアンス系に関しては、弁護士法その他士業に関する法令との関係上、合法的に法務サービスを提供できるEntityは少ないのが現状です。
以上を踏まえたうえで、IPOにおける法務・コンプライアンス系の支援主体として、書類作成であること、作業時間がとても長いことを考慮すると、行政書士に業務委託をすることが企業として賢明な選択肢であると考えます。
コロナウイルスの状況を踏まえて
コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、株価にも深刻な影響を与えております。
そのような中、株式の公募価格にも影響を与えるため、上場承認が下りていても上場を延期するケースが出てきております。上場準備会社の中でも、申請期を1年延ばす企業もあるかと思います。
ただ、上場の延期は決して悲観的なことではなく、成長戦略のさらなる構築、ガバナンス体制の強化のための時間が増えたと好意的に捉えることで、長い目で見たときに企業価値向上に資するのではないでしょうか。
コーポレートガバナンス体制の強化は、制度設計だけではなく、各役職員の意識向上がとても重要な要素なので、数カ月で達成できるようなものではなく、年単位で徐々に向上していくものだと考えております。
問い合わせ先
当事務所は複数社のIPO支援経験がございますので、IPOを目指している企業の方々はぜひ一度ご相談いただければと思います。
小川行政書士事務所
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